発達障害者の就職~職業訓練を経て一般就職した事例
ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ若者が養護学校を卒業し、職業訓練を経て大手スーパーに契約社員で就職した話を聞く機会があったので、今回はこの話をご紹介したいと思います(個人が特定されぬよう一部曖昧な表現を使用しています。)。
小学生の頃
中学生~高校生の頃
職業訓練を経て就職
北海道における障害者の職業訓練
Aさんは、養護学校卒業後、教師の勧めで工場に就職することは希望せず、職業訓練の道に進みました。
障害の有無に関わらず、18歳の頃に自身の職業適正について自己理解することはなかなか難しいことだと思います。
特にAさんは、自分の職業選択について幅広い視野を持とうとしていたので、自身の適正について考えるには良い期間を持つことができました。
Aさんは、1年間かけて次の内容の職業訓練を受けました。
◎就業に必要な職業人としての基礎学力、社会性、道徳性
◎安全衛生の知識、基本実技
◎食品加工の基本と応用実技等
また、月10万円程度の給付金も得ていたので、母親と同居するAさんは、生活費の心配をする必要もありませんでした。
Aさんのお母さんも、その間じっくりAさんの職業訓練を見守る余裕もあったようです。
そして、1年間の訓練を終え、Aさんはあらためて
「自分は一般企業で就労できる能力がある。人と関わる仕事がしたい」
と強く思ったのです。
この1年間の職業訓練がAさんの自信を深めたに違いありません。
公共職業訓練として、北海道には職業能力開発大学校、道立高等技術専門学院、職業能力開発促進センター(愛称 ポリテクセンター)及び障害者職業能力開発校があります。
各施設内において行う1~2年間の訓練、企業等の在職者に対する能力開発セミナー及び離転職者に対する短期間の委託訓練を行っています。
条件が満たされれば、訓練を受けながら、毎月給付金を受けることができます。
これらの施設で職業知識を得たり、技術を磨くこともできますが、特に障がいを持つ年齢が20歳前後の方については、将来の経済的自立に向け、自信の職業適性をじっくりと見極めるには、(Aさんの例を見る限り)良い制度だと思いました。
参考①:公共職業訓練
参考②:障害者の態様に応じた多様な委託訓練の概要 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000066670.pdf
おわりに
Aさんの就職に至るまでの経緯から、Aさんは自己肯定感を持つ方だと思いました。
小学校の頃は、随分辛い経験をされたと思いますが、自分のやりたいことについて信念を持ち、邁進する姿は驚くべき強さがあると思います。
しかし、現在一般企業で働くなかで、周りに障害を持つことを知らせず、働くことは、かなりの努力が必要になることでしょう(Aさんは、自身の障害について職場の上司には伝えていますが、同僚には隠しています)。
通院もしていません。
今後、Aさんが今の職場で、次のステップを進んでいくには、自分の障害について受容することが必要であるように思いました。
Aさんの職場での様子を聞く限り、次のようなことが必要に感じたからです。
・就労中、特性により感情の高ぶりが大きくなった場合、それをコントロール・対処できる方法を持っているのか
・キャパオーバーしないような働き方を意識しているか
残念ながら、以上のことについて、私がAさんに確認したり、助言できる立場にはありません。
けれども、Aさんが末永く充実した就労生活を送って欲しいと強く願っています。
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*長女が来年度通う予定の放課後デイサービスでは、主たる活動の一つとして将来の自律・就労に向けたトレーニングをしています。