にののシステム科学講座

発達障害、家族、生活のあれやこれやをテーマにレポートします。

相手の言葉を字義通りに受け取めてしまう発達障害特性とは

発達障害の一特性として「言葉を字義通りに受け取る」という特性があります(発達障害に関わる診断があってもこの特性が無い人もいますし、その程度にも個人差があります)。

 

「言葉を字義通りに受け取る」とは、例えば長女の場合

食事中、テーブルの下にぽろぽろ食べ物を落としていた時に

「そんな赤ちゃんみたいな食べ方するのをやめなさい」!」と私が注意したとします。

 

要は「食べ物を落とさないよう気をつけて食べてほしい」と伝えたいところ

「私は赤ちゃんじゃないもん!」と相手の真意と外れた回答をするのです。

 

このように例えを用いた表現等を使って長女に物を言うと、真意が伝わらないばかりか、相手の言葉の気になった部分にだけ反応するという傾向があります。

そのため、常に言いたいことを具体的かつ簡潔に伝えるよう気をつける必要があります。

 

長女に「言葉を字義通りに受け取る」特性があることは約3年前から気づいていたことですが、最近改めてこの特性について考えさせられた出来事がありました。

 

ninono0412.hatenablog.com

 

覚えられなかったダンス

長女があるダンスのイベントに参加した時の出来事です。

そのイベントでは、始めに参加者全員で講師からダンスを習い、最後にそのダンスを発表します。

約1時間半で初めて習ったダンスの振りを覚えなければならないため、最後の発表までに習った踊りを覚えられる子もいれば覚えられない子もいます。

 

長女は残念ながら発表までにそのダンスを覚えることができなかったようでした。

最後のダンスの発表では、長女を含め踊った子どもたちは20名ほどおり、観客席に向かって前列に10名、後列10名に並びました。

 

長女はダンスの前半部分、後列に並んでいたため、ダンスを覚えていなかったとしても前列の子たちが目に入るためか順調に踊っていました。

そしてダンスが後半に入ると、前列と後列が入れ替わり長女が前列となりました。

そのとたん、長女の踊りが遅れがちになり、時折立ちつくす場面が出てきました。

長女以外にもダンスを覚えきれなかった子たちはおり、その子たちは隣の子に目をやりその動きを真似ています。

その時私は長女は何を考えているのだろうと不思議に思いました。

 

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言葉を字義どおりに受け取った長女

後から長女に発表の途中にダンスをやめてしまった理由を聞きました。

 

長女「先生がダンスは必ず覚えて人の真似をしてはダメだと練習の時に言ったの」

 

なーるーほーどー。

 

先生が真剣に練習に取り組んでもらうために生徒に言った言葉を、長女は字義通りに受け取ってしまった。

そのため、人の踊りを見て真似をしなかったんだ。

 

大体、発表の場で踊りをやめてしまうよりは、横目に人の踊りを見ながらでもダンスを続けた方が真剣に取り組んでいるようにも見える場合もある。

そして、何より発表の場で1人ダンスをやめてしまうことは目立ってしまう。

 

そういったことを大多数の子たちは感覚的にわかるのだろうけど、長女は言葉を字義通りに受け止めてしまうため、その場にふさわしくない行動をとってしまったのでしょう。

長女には、

  • 先生が人の真似をしてはダメだと言った本当の気持ちは「一生懸命に覚えるよう頑張ってほしい」という気持ちだったこと
  • 本番までに振りを覚えられなかった子もたくさんいて、そういった子たちは人の真似しながら踊っていたこと
  • 途中で動きをとめるとかえって目立ってしまうこと
  • 真似しながらでも最後まで踊れば「頑張っている」と周りは思うこと

を伝えました。

以上のこと全てを長女が理解し、今後に活かすことができるほど「言葉を字義通りに受け取る」という特性は扱いやすいものではないけれど、

大人の言うとおりにできなかったとしてもなんとかなる!!

という感覚を徐々に身につけていってほしいと思います。

 

同じ特性をもつ私の過去

 実は私も長女のように子どもの頃から「言葉を字義通りに受け取る」特性をもっていました。

その特性がほんの少しずつ緩和されて人とのズレを感じることが少なくなったのはここ8年ぐらいのこと。

そして、今長女の特性を原因とする不思議な言動を目の当たりにして、生きづらかった過去に特性が関わっていたことに気づき、胸がしめつけられる思いをすることもあります。

 

 

長女のダンスの一件では、大学時代の部活のある出来事を思い出しました。

私は球技系の部活に入っており、ある試合の大事な場面で点数を取り損ねるという大きなミスをおかしました。

それに腹を立てた監督に「お前は真剣に取り組んでいない」と叱責されました。

私は、真剣に取り組んでいるのに「真剣に取り組んでいない」と言われたことにものすごく腹を立て監督に抗議しました。

今思えば「私は真剣に取り組んでいた」と真剣に訴える私を見て監督は「きょとん」とした顔をしていました。

 

監督はその試合で負けたことに対して憤りを感じていて、その勢いで大事な場面で点数を取れなかった私にその怒りを「真剣に取り組んでいない」という言葉を使ってぶつけたのでしょう。

その言葉を字義通りに受け止めて抗議する私に監督は「何を言っているのだろう?」と不思議に思ったのでしょうね。

(過去の私。イタスギル。)

私は過去にどれだけのことを字義通りに受け止めて、悩んだり怒ったり苦しんだりしてきたんだろう。。。

(考えるだけでオソロシイ。)

 

言語療法士の話

このダンスの一件を長女を担当する言語療法士に話すと、

「普段はマイペースに自分のやり方で行動するけど、構造化された場面で上の立場の人が言うことはそのまま受け止めるんだね。ダンスは向いているかもしれない。」

と言われました。

長女が居心地が良いと感じる構造化された環境では、この字義通りに受けとめるという特性が良い方向に働き、長女の成長を促す可能性があるかもしれません。

 

今回の件では、発表の場面で踊りを覚えていない姿を堂々とさらしても、あまり気にならないようなので、言葉を字義通りに受け止めることで被るデメリットにも案外へこたらないのかな?

おわりに

「言葉を字義通りに受け止める」という特性があった場合、相手の言葉や表面的なルールに縛られた言動をとりがちで、それが人とのズレを生み出してしまうことがあります。

そして、本人はそのズレがどこから生じたものか理解することは難しく、対人関係で問題を抱えるのはある程度避けられません。

 

そのため長女には、

自分が相手の言葉を聞く前から感じていた気持ち、やりたいことを大切にすることで相手の言動を真に受けず、良い意味で流す術を身につけて欲しいと考えています。

これができれば、トラブルがおこった時に生じるネガティブな気持ちや迷いを軽減することが多少できると思うのです。 

 

長女がこの特性を自己理解する日はまだまだ通そうだけど地道に伝えていこう!!