夫が子どもをきつく叱る時、妻はどうフォローしたら良いのか?自他境界の問題から考えてみた。
発達が気になる子どもの親向けポータルサイト「LITALICO(りたりこ)発達ナビ」のQ&A。
大変勉強になる話題が多く取り上げられており、折に触れて興味深く拝読しています。
中でも大変気になる質問があったのでご紹介します。
小学2年生、アスペルガーの診断を受けてる娘がいます。
旦那が娘に対して、キツく言うときがあります。
特に仕事で疲れて余裕のないときは、暴言に近いものもあります。
その度に娘の顔は緊張感にあふれ、表情はこわばるか、表情がなくなる感じになります。
旦那の言葉に対して、「はい。」「はい。」と返事をして涙する娘。
そんな娘の姿を見て「泣くならちゃんとやれ!」と。
でも、緊張で旦那の言ってる言葉の意味が分かってない事もしばしば。
そして、また怒られる・・・
旦那も娘と似たような傾向をもっていて、それを自覚していますが、イライラしてる時はそれを見失っているのか大人と同じことをさせようとします。(中略)
イライラしてる時は余裕がなくなるのもわかるし、我が娘に期待するのもわかりますが、わたしが娘に叱ったり怒ったりしても、あれほどの緊張状態になる娘の姿はないので、見ていて可哀想になってしまう事もあります。(わたしが怒るのは慣れてるのかもしれませんが…)
こういったとき、わたしは娘に旦那の期待する気持ちを説明してあげた方がいいのか…
ただ、やり方だけを説明してあげた方がいいのか…
戸惑うところもあり、どうすれば良いのでしょうか?
質問者の夫(ここでは「Aさん」と言います。)が娘をきつく叱るとのこと。
昔の自分と重なるようで人ごととは思えない内容でした。
とは言っても、この問題は非常に難しく、Aさんのことをよく知らないと適切なアドバイスは難しいと思います。
そこで「私が想像するAさん」というベースで思考を巡らすことにしました。
*ここからの記事は、あくまでもAさんの人となりについて私の想像がベースであることをご承知おきのうえお読み下さい。
きつい怒り方をしてしまう理由
Aさんは自分と似た傾向を持つ娘がこのままだと苦労が多い人生になると考え、とても心配している。
だからこそ、娘にできるだけ人生を安寧に過ごす力をつけて欲しいと願う気持ちがあるのでしょう。
それだけに、娘の些細な言動が気になってしょうがない。
そして、その些細な言動が、障害特性ゆえのものだと感じたものなら、すぐさま定型の枠内におさまるような言動に正したくなる。
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Aさんは、このように思っているのであれば、自分と娘の境界を見失っているのかもしれません。
だからこそ、大人と同じようなことを娘にさせようとしているとも考えられます。
「自他の別がつかない」「自他境界の問題」「自他の境界線がない」
発達障害特性の一つです。
脳内が他人とつながっていて自分の思いを察知してくれている、自分の思いは当然他人も理解している、自分ができることは他人も当然できると思い込んでいる傾向のことを言います。
そのため、相手が自分の思いと反するような言動をすれば、なぜ相手が理解していないのか、自分の思うようにしてくれないのかと無性に腹立たしくなる。
一方、Aさんの娘がこの父親の思いを理解しているのか?
理解できないですね。当たり前です。
今のAさんの思いは、これまでの自身の経験から生み出されたものであって、娘を思う親の気持ちでもある。
それをたかが8年かそこらしか生きていないAさんの娘がそれを理解できるはずもない。
ただただ父親の剣幕に圧倒されて、萎縮してしまう娘をみて、Aさんはますますイライラすることでしょう。
自分の思いが伝わらないことにイライラし過ぎて、本来の目的を見失ってしまうのです。
人生観をくつがえす問題になりかねないということ
Aさんは自分の特性(傾向)を自覚したうえで「特性のせいで苦労をすることはあっても自身の努力でなんとかするしかない(自分は努力してきた)」と考えているようです。
だからこそ、この問題は難しい。
「俺もそうだったから、わかる。でも、このままでは生きていけない。社会では理解してもらえないほうが多いんだから」
この台詞から、Aさんがこれまでどれだけの苦労をされたか推して知るべし。
Aさんのこれまでの苦労を否定するような発言はしない方が良いし、可能であれば受け止めてあげた方がいいかもしれません。
これまでの人生をパートナーに丸ごと否定されてしまうのは辛いことですし、自分自身で見つめ直すことだって相当辛い。
自他の境界をつけるという方法
質問者の方は、もともとAさんにきつく叱られる娘をどうフォローしたら良いか?と質問されています。
けれども、お嬢さんの気持ちに寄り添う形でのフォローは必要だとしても根本的な解決に繋がらないので、やはりAさんがきつい叱り方をしなくてもすむ方法を考えた方が良いと思います。
そうだとすると
Aさんが、自分と娘が全く違う人間だと理解し、娘と自分の自他境界をつける方法が良いと思います。
「自分と娘は違う人間なので、自分のやってきた方法を娘にやらせようとしても、娘にとって良い方法とは限らない」と。
Aさんが自身の特性を肯定的に受けとめていないのであれば、娘に同じ傾向を見てとることは娘の将来を思うと辛いことかもしれません。
ですから、Aさんに、娘と自分は違う人間であることに気づいて貰うのはAさんにとっても安心感に繋がるので、理解してもらえる可能性はあると思います。
では、Aさんにどう説明すればわかって貰えるのかを考えてみました。
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①娘に同じ傾向があっても、娘は傾向に理解ある支援者や親に支えられている訳だから、今から将来にかけて様々なことを学ぶことができる。
それゆえ、娘はこれから伸びやかに成長していく可能性がある。
(だから、心配しすぎないで欲しい。)
②そもそも娘はAさんだけでなく、妻の子どもでもある訳だから、Aさんだけでなく、妻の傾向があるかもしれない。
そう考えると、娘という人間にあった物の伝え方や理解の方法があるかもしれない。
(だから、きつく叱ることに意味はない。)
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と話せば、Aさんに何かしら伝わるかもしれせん。
Aさんがお嬢さんの気持ちに寄り添った対応ができるようになることを陰ながら願っています。
↑定型者の妻が「アスペルガー」の夫について書いた漫画本。妻の苦悩が切ない。。。
おわりに