にののシステム科学講座

発達障害、家族、生活のあれやこれやをテーマにレポートします。

長女の精神的な幼さは発達特性か、それとも赤ちゃんがえり?

ASD(自閉症スペクトラム症)と診断された長女が、個別療育*1に通い始めた頃の話。

個別療育では、基本的に長女が自由におもちゃを選び、遊ぶことができます。

今年の5月のある日に行われた個別療育で、長女は主に音を鳴らしたり、回転させることを目的としたおもちゃで遊びました。

べビラボ アンパンマン ひらいてぴょこん!

 長女が遊んでいたおもちゃのうち一つは、上の画像にあるアンパンマンのおもちゃに似たタイプのもので、これは対象年齢が1歳からです。 

このことについて担当心理士は、楽しむおもちゃが幼く、長女が同年代の友だちとうまく遊べない場合が出てくると言いました。

私は、よく「発達障害の子は年齢を7掛けして考えろ」というのを聞くので、長女も実年齢より幼いことに興味を持つのだろうと考えました。

 

赤ちゃんがえり?

つい先日、長女がショッピングセンターのアンパンマンのカートに乗りたくて、店内で大泣きするという出来事がありました。

このショッピングカートは年長の長女が乗るには小さく、長女の対象年齢外のものでしたし、店内で大泣きすることも実年齢に見合わない行為で、これは発達障害に由来する言動だと考えていました。

ninono0412.hatenablog.com

 このショッピングセンターの出来事について、大学の発達心理相談室の担当教授に伝えたところ、

教授「赤ちゃんがえりみたいなものだよ。長女ちゃんは、今、赤ちゃんの頃からやり直しているのかもしれない。」

私「赤ちゃんがえり!

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ところで、最近になって、今まで私は、子どもの気持ちに寄り添う姿勢に欠けていたと反省し、「子どもを甘やかす」よう心がけています。

ninono0412.hatenablog.com 

その効果あってか、最近長女が私に甘えることが増えてきました。

これら一連の長女の言動等から、同相談室の担当教授は、

私が子どもの気持ちに寄り添えるようになってきたので、これまで私に甘えられなかった長女が私に甘えられるようになり、年齢より幼い行動(愛着行動)*2を取るようになってきた→赤ちゃん返りみたいなもの

 と考えたようです。

 

以前から、教授は、長女へのかかわり方について

発達特性よりも、心理的即面(「愛着」等)から長女の言動を理解した方が良いと話をしていました。

たとえば、お菓子屋さんやおもちゃ屋さんの前で、だだをこねている子どもというのも、たいていは、家ではだだをこねられない子どもです。

家で子どもが望むことを、せいいっぱいやっていると、外へでたときには、親が望むことをよく聞いてくれる子どもになります。(中略)

ところが、家で子どもの望むことをきちんと聞いてあげないと、子どもは外で自分のいうことを聞いてもらおうとする、いうことを聞かせようという行動をしますね。

佐々木正美他『子どもへのまなざし』303頁

子どもへのまなざし

子どもへのまなざし

 

 

上記引用部分の内容に基づき、心理的側面からショッピングカートの件を考えると、長女は家で(私に対し)だだをこねられず、外では私が強く言えないことを知ったうえで、普段とは違う強い態度を出したということなのでしょうか。

 

乳幼児期に親や保育者に、十分かわいがられていない子どもは、友だちに意地悪をしたり、保母さんのまわりをたえず、ぺたぺたとつきまとって行動します。

本当は、こっちみて先生、こっちみてといっている子どもほど、みてあげなくてはいけないのです。

そのときに子どもの要求を十分に満たしてあげないと、すこし大きくなったときに、一見、赤ちゃん返りのようなことをするのです。

佐々木正美他『子どもへのまなざし』310頁

長女も、保育園では保育士を求める場面が多いようで、私の長女へのかかわり方に問題があるのかもしれません。

 

愛着の問題

なぜ、私がしつこく、自身の子どもに対するかかわり方について内省するかというと、私自身が母親との間に安定した愛着*3を形成できなかったことに関係します。

(この詳細については、いまだにモヤモヤとした黒いものを心の奥底にかかえており、向き合うことさえ出来ない状態なので説明することは難しいです。)

子どもが、それぞれの愛着パターン*4。を示すようになるのは、親の愛着スタイルに対する適応戦略の結果だと考えられている。

子どもが安定型の愛着パターンを示し、他者を信頼して、困れば助けや親密さを求めることは、親が安定型の場合には有利に働くが、親が回避型である場合には、むしろ拒絶や失望を味わうばかりで、適応上不利を生じてしまう。

また、親が不安定型である場合も、安定型のように親を信頼し、親の気分の変化を無視していたのでは、親の逆鱗にふれることになってしまう。

子どもは親とうまくやっていくために、知らずしらず、親と同じスタイルを身につけていかざる得ない面があると言えるだろう。

その結果、世代間の伝承が起きやすいのである。

岡田尊司 『愛着崩壊』95〜96頁

愛着崩壊子どもを愛せない大人たち (角川選書)

愛着崩壊子どもを愛せない大人たち (角川選書)

 

私は専門家ではないので、自身の愛着問題を深く分析することはできませんが、これまでの母親との確執を考えると、私の愛着スタイルは「安定型」とはけして言えません。

そのため、娘が私と同じ愛着スタイルを身につける可能性があるならば、私の愛着スタイルが娘に影響しないよう、娘に対する関わり方に気をつけたいのです。

たとえば、愛着パターンによって子どもに次のような問題が出てくるそうです。

  1. 回避型〜反抗、攻撃性の問題
  2. 抵抗/両価型〜不安障害になるリスクが高い、いじめなどの被害に遭いやすい
  3. 混乱型〜境界性パーソナリティ障害になるリスクが高い
岡田尊司 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』
愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

 

 

自分の内面の問題を解決することは時間のかかることですが、この問題が娘とのかかわり方に関係していると自覚するだけでも大きく違うと思います。

娘に将来起こり得るリスクをできるだけ回避するため、できるだけ自身を客観視する必要はあります。

 

おわりに

結局、長女の精神的な幼さを感じさせる言動が、発達特性に由来するのか、愛着行動に由来するのかは、私は専門家ではないのでわかりません。
(強いて言えば、ミックスされているように見受けられます。)
 
けれども、どちらの場合であっても、「子どもへのかかわり方」が大切である点は変わりません。
 
なお、前記事で「障害受容」のお話をしましたが、私の場合、受容しているかどうかを気にするのは、「障害」というよりは、むしろ「子どもの気持ち」なのかもしれません。
 

 

*1:長女が通院する病院と提携する児童デイサービス

*2:愛着行動〜幼児が泣いたり、微笑したりする事で愛着の対象となる 特定の人物(母親など)を自分の近くに引き寄せ、安心を得ようとする行動

*3:”子どもと親との間に結ばれる絆のこと” 岡田尊司『愛着崩壊』角川選書

*4:愛着が安全基地としてうまく機能しているか、ストレスに対してどのように愛着行動を示すか、によって、子どもの愛着のパターンはおおむね四つに分かれる(「安定型」「回避型」「抵抗/両価型」「混乱型」)岡田尊司愛着障害 子ども時代を引きずる人々』